フィス「魔王の煩悩は666ある」 |
そう言って主は出掛けてしまった。
島の外、別世界へ 行ったようだ。
ベルシー「魔王の煩悩…」 |
ぬーい「人間のは108つあると言いますね」 |
のほほんとぬいぐるみが答えた。
片手に乳白色の奇妙な液 体が入った瓶を持っている。
ぬーい「人間の三大欲求は「食欲」「性欲」「睡 眠欲」。煩悩はしばしばこの 「欲」に分類されますが、簡単に言えば心を乱すものですね」 |
ベルシー「はぁ…」 |
主 はよく食べるし、眠る。性欲については知らないが、大人の女性である以上あってもおかしくない。
が、神道を極めつつある主に煩悩など存在するのだ ろうか。最近は神と心を通わす祈祷も身に付けたというのに。
ぬーい「主人はもともと人間ですが、死人でもあ ります。三大欲求はいわば 「癖」でしかありません。」 |
貴方も癖で訓練して るでしょう。とぬいぐるみが笑う。
ベルシー「なら主の心を乱す「煩悩」とは?」 |
ぬーい「有り体に言えば「破壊欲」です。まあ主 人は肉好きなので、狩猟本能 といっても良いでしょう」 |
肉食動物は狩りをして 生きる。
人間も食料を得るために狩りをする。
…もっとも、狩るより飼育したほうが効率は良いのだが。
ぬーい「更に、感情を持っています。慈しみ、愛 し、憎み、殺し、傷つけ、無 関心になることができる。坊主憎けりゃ、と言いますか「主人は嫌いな人間とその周り」に八つ当たりする傾向がありますね」 |
ベルシー「まさか」 |
ぬーい「ああ、大丈夫ですよ。島内の人には手を 出さないと思いますし。あの 肉屋さんも平気でしょう。」 |
後 始末はしますよ。魔王ですから。
ある日、あなたの知らない人が大量に死にました。
ある日、あなたの知ら ない人が大量に生き返りました。
ある日
ある日
ある日
フィス「煩悩というか、リビドーよね、これ」 |
手を下さない殺人。
死人のでない殺人。
優 しく清らかな歌声が響いている。