理由を聞く暇すら無く浮遊感に包み込まれ、遺跡の外へと投げ出される。
ぬーい「久しぶりに出ましたね。今日はどんな予 定ですか?」 |
ぬいぐるみはうーんと伸びをしつつ主に向き直った。
主 は青い髪の少女にもらったメモを見ながら答える。
フィス「今回は、白砂と青い宝石でアクセサリー を作ってもらうの。私に一 番必要な物。」 |
そういえば、主は先日の砂の化物 との戦闘で喉を痛めたと言っていた。
その痛みを和らげる為に青い宝石の装飾が必要なのだそうだ。どういう理屈なのかは解らないが。
ベルシー「宿はどうしますか?」 |
外 は人が多い。大きな宿が大量に立ち並んではいるが、空室の保証は出来ないだろう。
ましてや3人分、3部屋確保できるというのはかなりの低確率だ。
フィス「ん・・・先に宿を探そうか。こっちは予 約してあるしね」 |
主はメモをしまうと荷物を持って歩き出した。
その後ろ につき従う。ぬいぐるみはぴょんと飛び上がって私の肩に乗った。
結果、運良く3部屋確保できた。
私とぬいぐるみは人数に入らない ということで無料だそうだ。
代わりに主と1つの部屋で寝なければならないが。
ベルシー「・・・」 |
主 はシャツとロングスカートというラフな格好に着替えている。
私の目の前でだ。
ぬーい「遺跡でもそうだったでしょうに」 |
ぬいぐるみが苦笑しながら言う。
風呂も脱衣所もあるのだ から、そちらを使えば良いと私は思うのだが。
ぬーい「思春期は大変ですねぇ」 |
無 言で頭をはたいてやる。いたーいと棒読みでぬいぐるみは鳴いた。
フィス「さ、行こう」 |
砂 と宝石と代金を手に主が微笑んだ。
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部屋にて。
どうやって砂から作ったのか解らないが、出来上がった 銀の指輪を見て主が微笑んでいる。
精緻な細工の施された指輪だ。
フィス「はい、これ」 |
ベルシー「・・・・・・私に?ですか?」 |
これを作ってもらう時、かなりの代金を払ったはずだ。
こ んな高価なものを私に?
フィス「これは私の下僕である証。身分証明。つ けてもいいし、つけなくて もいい。外れなくなったりもしないから」 |
とりあ えず受け取って眺めてみる。
細工だけではなく、ちりりと鳴る飾りまで付いていた。
ベルシー「ありがとう、ございます」 |
銀の輪を左手の中指に通す。それを見届けて満足そうに主は頷い た。
フィス「あとこれ。選んで。」 |
差 し出されたのは薄い本だった。本というよりは綴じただけの紙だろう。
服のような、下着のようなものがいくつか描かれている。
ベルシー「これは?」 |
フィス「ねえさまに送ってもらったの。泳ぐか ら」 |
この時期に泳ぐ必要があるのだろうか。
多少暖かくはなっ てきたが、まだまだ朝晩は冷える時期だというのに。
フィス「君がベルシーかな?はじめまして。ぜひ この子に意見を聞かせてあげて」 |
聞き覚えのない 声が響いた。
部屋に私たち以外の人影はない。声の主を探すと主がコンパクトを差し出してきた。
フィス「ここだよ。通信機の中。私はフィシアテ ル。よろしく」 |
小さな画面の中で女性が笑ってい る。
ねえさま、ということは主の姉なのだろう。軽く頭を下げた。
フィス「ちゃんと選んでおいてね。ねえさまと話 し終わったら寝るから、ベ ルシーもぬーいも好きにしてて」 |
用事は済んだと 言わんばかりにベッドに寝転び世間話に興じ始める。
時々聞こえる笑い声が耳に心地いい。
そうだ、忘れないうちに選んでおこう。
ぬーい「ふむふむ。なかなかマニアックですね。 良いと思いますよ」 |
いつの間にやら覗き込んでいたぬいぐるみが笑う。
頭を 掴んで投げ飛ばすとパフンという軽い音とともに壁にぶつかり床に落ちた。
なるだけ地味で、体を冷やさない構造のものを選んだというのに。
主 以上に、このぬいぐるみは解らない。
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フィス「あ、選んでくれたんだね。よし」 |
翌朝。さっそく主は服を創り出した。
見るからに寒そうだ がこれから泳いでくるとはしゃいでいたので多分何ともないのだろう。
颯爽と消えていった主を見ていると、聞きなれた声がかかった。
ぬーい「ベルシー」 |
ベルシー「・・・何だ?」 |
ぬーい「 ゆうべはおたのしみでしたね」 |
ベルシー「ッ!!!?」 |
・・・・・
・・・・・・・・・・
脈が無い。呼吸も無い。
ただほんのりと温かい身体。
眠る主は、やはり
見られていたとは。
ぬーい「ふふふ」 |
隅 に置けませんねぇ、と訳のわからない呟きが聞こえた。
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(以下私事な懺悔)
プロフィール、全 文字埋めてしまったorz
二つ名は「二つ名メーカー」から持ってきました。