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2010 12,09 20:00 |
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シリアスばっかりで頭が爆発したので1日で書いたもの。
醒夢(779)さんレンタル。 ご本人許可ありでございますよ! ―――――
春日野 醒夢は間の悪い男である。 というか運の無い男である。 むしろ何もない男である。 いや、あった。 勇者という、肩書きのみが。 あれっ、それも無くしたんだっけ? …まあいい。 そんな男の話をしよう。 ◆ 「ついてないなぁ…」 何もない男、春日野 醒夢。 彼は今日も運がなかった。 遺跡外。よほど物好きな冒険者以外は宿をとる。 期間契約で同じ宿をとる者。 毎回違う宿をとることを楽しむ者。 醒夢は前者に属したが、修復工事のため馴染みの宿を追い出されたのである。 「遺跡外で本気の戦闘とか…宿、壊さないでよ…」 宿に置いているのは精々おもちゃくらいの物だが(島産の物は持ち歩いて当然だし)、無いなら無いで寂しい。 何より彼だけはタイミング良く外に出た知り合いが居らず、適当な宿に独り泊まることになったため孤独に苛まれていたりした。 「……………寝よう」 失礼。孤独より眠気に苛まれていた。 もぞもぞと横になった辺りで隣室の客が戻って来たらしい。 『ね、ベルシー。しよう?』 「!?」 聞こえてきた声に飛び起きる。 この声―思念―は、あの魔王だ。 神代の魔王にして勇者、フィアヴェル=リーンディース・ディブロズ。 彼女が居ると、いうことは… 『…主、まだ昼間ですよ』 「…っ」 宿敵である、魔王の下僕にして魔王、ベルシーもいた。 というかこの明るい時間からいちゃついている。 『隣、誰もいないし良いじゃない。それに夜の方が響くもの』 ちょっと、何する気なの!? 思わず心の中で叫んだ醒夢だが隣に聞こえるわけもなく、事態は進展していく。 『それもそうですが…途中で止められませんよ』 『きゃっ』 重いものがベッドに落ちた音。 次いで限界そうなスプリングが軋んだ。 おいやめろ。 むしろお前がやめろ、壁に張り付いた春日野 醒夢。 『主は堪え性がありませんね』 『だっ…て…んぅ』 聞いたこともない(あったら困る)男の甘い声。 普段からは想像もつかない女の切ない声。 哄笑と罵倒から導くには難しい声音。 彼らを引き裂いたのは醒夢なのだが、その反動か異常なまでに甘ったるい関係になっていたようである。 『柔らかいですね…潰してしまいそうです』 『そんなに?』 『……今の私の力なら、多分潰してしまうと思います』 衣擦れの音。荒い息遣い。 醒夢はキレた。 「こいつらはぼくを嵌めようとしているんだ…!その手には乗らない!」 どうせマッサージとかストレッチみたいなありがちなオチしかないに決まっている。 こんなもので勇者たるぼくを堕落させようだなんて…卑劣な! 醒夢は斧を掴むとそっと部屋を出た。 壁をブチ破るのを躊躇った辺り、やはり彼は小心者である。 …小心者だけどどう見ても犯罪者です本当にありがとうございました。 扉の前に立ち、深呼吸をする。 ドアをちょっとだけ開けてから(そのままだと上手く開かないと判断した)、勢い良く蹴破った!! 「リア充爆発しろこの魔王どもおおおおおおおおおおおお!!!」 「ひっ いやああああああああああああ!!!!?」 ストレッチとかありがちなオチではなかった。 神代の魔王は立派な胸をしていたし、従者はその首に、胸に喰いついていた。 時間が止まった。 一番最初に動いたのは従者。彼は着ていた黒い服を脱ぐと愛する主人に被せる。 そしてその右目を真紅へと変容させると同時に剥き出しの上半身を鱗で包んだ。 右腕は刃を纏い、左腕は鉤爪へと変じた。 「ベ、ベルシー…!魔王に魂を売ったか!!」 「売らせたのはテメェだろうがァッ!」 精一杯それっぽく叫んだ醒夢だが、普段から想像もつかないだみ声で返され縮み上がった。 従者が魔王化したのは、真実、醒夢のせいだし。 だん、とベルシーが床を蹴った。 醒夢は慌てて逃げ出す。 その足元にフィスの雷撃が突き刺さる。すっころぶ。 思わず振り返った醒夢の目に映った彼女の瞳は、涙と憎悪に覆われていた。 「よそ見してんじゃねェ!」 ベルシーの爪先が鳩尾にめり込んだ。 脚の形こそ人間だが、その硬すぎる感触は靴ではない。 「っか、ひぃっ」 呼吸困難に陥りながらも必死に逃げ出す。 命綱である斧を掴んだまま宿から転げ出た。 そこそこ大きな通りである。少なからず居た通行人は何事かと皆足を止めていた。 真っ黒な異形の男。 真っ青な斧持ち男。 どっちに味方すべきか咄嗟に判断出来なかったようだ。 これ幸いと助けを求めようとした醒夢にベルシーの怒号が突き刺さる。 「女性の裸を覗くとはどういう了見だッ!」 一斉に醒夢へ向けられる冷たい目。 誤解だ!と叫ぼうとした醒夢だが、目に焼き付いた神代の魔王の立派な胸がそれを邪魔した。 それに誤解ではない。 「ひ、昼間からいちゃついてたじゃないか!」 「覗いていい理由にはならんだろうがァ!」 ごもっともである。 ベルシーが駆け迫り爪を振り下ろすのを身を捩ってかわし、なんとか逃亡しようとするが上手くいかない。 鳩尾のダメージは意外と深刻だった。 何より人の目。軽侮の目が醒夢を縛っていた。 「なんで…こんな…」 「自業自得だなァ」 言い返し様の無い言葉に沈黙するしかない。 トドメを刺そうとしたベルシーが、ふと宿を見上げた。 訝しく思った瞬間。 「春日野、醒夢!」 透き通る思念の声に宿を見上げる。 見ればぶかぶかの黒い服に身を包んだフィスが窓から顔を出していた。 両腕を掲げ、光を集めている。 「みんな逃げろーッ」 誰かが叫び見物人が散っていく。 醒夢も逃げようとしたが何かに引っ張られた。 見れば、足に黒い触手が絡み付いている。 触手の大元はベルシーであり、彼は完全に人であることを放棄して全身をマナの殻で覆いつつあった。 「この、化け物っ!」 「テメェのせいだ。…神の怒り、味わえッ!」 醒夢の必死の罵倒を嘲笑い、ベルシーは体全てをマナで覆った。 マナの外殻。無敵の鎧。 「終末の神鳴りよ、凡てを裁け!」 神代の魔王が全てを賭けた雷を撃ち込んだ。 「あばばばばばばびばばばばばばばばばばばッ!」 真っ白に弾ける視界。 神経全てが痺れを訴える。 斧はまるで無関心にただ存在していた。 出番は無かった。 ―――プスプスと煙を上げながらも奇跡的に生きていた醒夢は、ベルシーによって近くにいた女冒険者に引き渡された。 覗き魔への折檻は女に限るとの判断からである。 そして今。折檻されている醒夢に、彼に加護を与えるイカス神は言っている。 ―――ここ(偽島)でリア充に関わるべきでなはない、と――― 【おしまい】 PR |
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